オカリンメモ

【エスパー魔美】衝撃の問題作『リアリズム殺人事件』についてVol.3

投稿日:2017年9月13日 更新日:

【エスパー魔美】衝撃の問題作『リアリズム殺人事件』についてVol.2の続き

『リアリズム殺人事件』は中盤以降から原作とアニメでは全く話が違ってくる。

今回は原作について見ていこう。

原作版の中盤以降のあらすじ

高畑さんの推理によって、竜王寺監督が撮影しているのが『地獄変』だとわかる。
高畑さんは魔美に『地獄変』のあらすじを説明する。

映画の撮影現場では、撮影が全部終わり、スタッフや俳優たちは全員帰った。
残ったのは監督と女性だけだ。

監督は女性にもっとも肝心な場面が残っているという。
「きみが、牛車とともに焼かれるシーンだ。」と。

女性はそんなことをしたら死んでしまう、と帰ろうとする。
しかし睡眠薬入りのお茶を飲まされていたため、眠ってしまう。

魔美はパパに竜王寺監督のことを知ってるか尋ねる。
パパは監督の過去の作品の殺陣のすごさ、真剣を使った撮影で死人が出たため監督が映画界を退いたという噂を語る。

その夜、魔美は女性が燃やされる夢を見て、急いで現場に駆けつける。

監督は眠らせた女性をチェーンで縛り、牛車の中に閉じ込め撮影の準備をする。

女性が目を覚ますと、牛車に火をつけ撮影を始める。

魔美が現場にたどり着き、燃え盛る牛車をテレキネシスで浮き上がらせ、中の女性を救おうとするが、火の周りが早く中には入れない。

そこで女性だけを部分テレポートさせ、牛車の外に出す。

浮き上がらせた牛車が映画のセットの上に落下し、セット全体に火が移る。

監督は撮影済みのフィルムを取りに、燃え盛るセットの中に飛び込む。

しかし監督もセットもフィルムもすべて燃えてしまう。

最後に魔美とパパとの芸術談義で終了。

ポイントになる部分を細かく

徹底的に悪人として描かれる監督

最初に自殺をしようとした女性を止めたとき、

「これまで、この屋上から四人の自殺者が飛び降りるのを黙って見過ごした」

とある。

そして本性を現すシーンの会話を見てみよう。

監督「あくまでも生身の女が火に焼かれ、もだえ苦しむ姿をありのままにとらねばならん!!」

女性「そんなことをしたら死んじゃうわ!!
あたしに生きる力をあたえてくださったのは、先生じゃありませんか!!」

監督「そんなものあたえた覚えはない!!
わたしは、死にたがっている人物を探していたのだ。
どうせ死ぬなら意義のある死をあたえたいと!!
そして、きみを見つけた。
よろこんで死んでくれるべきじゃないか!!」

睡眠薬で女性が眠る。

監督「わたしはね、ガンを宣告されているんだよ。
余命は半年もない…。
だからこそ、この「地獄変」にすべてを注ぎ込んだのだ!!
きみの心変わりは残念だが…、いずれにせよ、今夜、わたしは「地獄変」を撮了する。」

このように藤子・F・不二雄先生の原作では監督は悪者で、そこに正義の味方エスパーお魔美が登場し、悪を懲らしめ善人を救い、めでたしめでたしとなるのだ。

勘のいい子供なら、途中で監督は悪者で女性の命が危ない!と感じるだろう。

そこで魔美が駆けつけて悪を滅ぼしてくれ、文学作品と現実との区別がつけられない異常な殺人鬼が死んで一安心、というわかりやすい話の流れになっている。

あまりひねりすぎると子供が混乱するかもしれないという、藤子先生の配慮と言えるかもしれない。

『地獄変』について

芥川龍之介の代表作の一つ、『地獄変』とはどういう話なのかここでおさらいしておこう。

(全文を読みたい方は青空文庫の『地獄変』をお読みください。)

原作内で高畑さんがうまくまとめているので、まずはそこを引用する。

魔美「どんな話なの?」

高畑「王朝物なんだ。ひと言でいえば、芸術至上主義者の悲劇ってことになるかな…。

主人公は、良秀という天才的な絵師…。ごうまんで独善的できらわれ者だけど、自分の娘だけは溺愛していた。
その良秀が、堀川の大殿様から地獄変のびょうぶをかけと命ぜられて…。

それから五、六か月、下絵が八分通り入ったところで、良秀の筆が止まった。
ただ一つかけない部分があるという。

牛車に乗った美しい上臈が、猛火に包まれて空から落ちてくるその図柄がどうしてもかけぬという。

良秀は大殿に願い出た。

「檳榔毛の車に、私の目前で火をかけてください。そして、できればその中に…。」

堀川の殿は聞き届けてくれた。

ただし、牛車とともに焼かれたのは、死ぬほど愛していた良秀の娘だったんだよ!」

魔美「それで!?良秀はどうしたの!?娘を助けたの?」

高畑「いや、りっぱに絵を完成させたとさ。

しごとに打ち込むきびしさという点では、良秀と竜王寺さんは通じる部分があるね。」

※上臈(じょうろう):大奥の女中の役職名のひとつ

※檳榔毛(びろうげ)の車:白く晒 (さら) した檳榔の葉を細かく裂いて車の屋形をおおったもの。上皇・親王・大臣以下、四位以上の者、女官・高僧などが乗用した。

魔美が燃え盛る牛車をわざわざテレキネシスを使って浮かせて、セットの上に落下させてしまったのは、「牛車に乗った美しい上臈が、猛火に包まれて空から落ちてくるその図柄」が『地獄変』に描かれていたことから、それを再現したかったのだろう。

高畑さんの要約にない部分で重要だと思う部分を付け足しておく。

・良秀は自分で実際に見たものでないと、心のこもった絵がかけない。

・娘は堀川の大殿につかえていたが、良秀は自分の元に返して欲しがっていた。

・ある夜、娘は着衣が乱れた状態で泣きながら部屋から飛び出してきたことがあり、それを良秀は見ていた。

・娘が焼かれた後、絵を完成させ、良秀は自殺した。

次回はこれらを元に、藤子・F・不二雄先生がどういう思いでこの『リアリズム殺人事件』を描いたのか、推察していこうと思う。

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【エスパー魔美】衝撃の問題作『リアリズム殺人事件』についてVol.4はこちら

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