オカリンメモ

【エスパー魔美】衝撃の問題作『リアリズム殺人事件』についてVol.5

投稿日:2017年9月18日 更新日:

【エスパー魔美】衝撃の問題作『リアリズム殺人事件』についてVol.4の続き

それではアニメ版『リアリズム殺人事件!?』について見ていこう。

原作との大きな違いは、竜王寺監督が実際に女性を焼き殺すところを撮影するつもりなど一切なかった、というところだ。

ではなぜ監督は自殺をしようとした女性を女優に選んだのだろうか。

監督はこう言う。

「つまりわしの作戦は大成功だったっていうわけだな。」

「君はこのわしに殺されるかもしれないという不安を抱きながら、この館にとどまり父の絵を完成させるために殉死する良秀の娘を演じ続けた。
その現実とドラマの中の精神的緊張感の一致。
それこそがわしが求めたリアリズムだよ。」

「映画におけるリアリズムとは何も事実を撮影することじゃない。
作られた映画がいかにリアルに人間の感情に迫っていくかということなんだ。
わしは役者の感情を引き出すためならあらゆる策をろうするがね。」

「映画は所詮まやかしだよ。
そのまやかしが素晴らしいんだ。
そのまやかしが人を感動させ、涙させるんだ。
そしてそのまやかしが芸術というものなのさ。」

このようにアニメ版の監督は非常に真っ当な芸術論をもって、撮影に臨んでいたのだ。

リアリズム芸術とそうじゃない芸術の違い

監督が言うには「作られた映画がいかにリアルに人間の感情に迫っていくか」がリアリズムとのことだが、もう少し噛み砕いて説明してみよう。

例えば、宇宙人が出てきたり、おとぎ話であったとしてもリアルに人間の感情に迫ってきたらリアリズム芸術と言えるのだろうか。

監督の定義では、「もちろんリアリズム芸術だ」ということになる。

その作品の世界に入り込めるかどうかがリアリズムかどうかの違いではない。

少しわかりにくいので、人間の感情に迫ってくるけど、リアリズムじゃない作品とはどういうものがあるのかを考えてみるといいだろう。

それは「ありえないからこそおもしろい」と感じるような作品だ。

他人事だから「いけいけ!」「やれやれ!」と思えたり、「こんな世界あったらいいなぁ(ありえないけど)」と作品に浸るようなことがあると思う。

そういうのはリアリズム芸術ではないが、もちろん芸術的価値に上下があるわけではない。

普通に映画を見るだけであればそんな区別を考える必要はなく、感動したらそれでいいが、作り手側の考えまで知りたいと思って見るのであれば、そういう区別もあるということを知っておくといい。

簡単に言えば「まるで自分ごとのように思える作品=リアリズム芸術」だと思えばわかりやすいと思う。

なぜアニメ版の『リアリズム殺人事件』のほうがいいのか

この原作からの改変を見て、人によっては「原作の方が人間の闇を感じられて深い」と感じるかもしれない。

確かに、原作側は、ガン宣告されて余命幾ばくもない監督の心理を考えると、読後に暗く重い何かが残る。

アニメ版の方は完全なるハッピーエンドなので、明るく楽しくいい感じで終わる。

通ぶってるアホどもは暗くて重い方がいい作品だと言いたがる傾向があるが、そんなものは暗いのが好きか、明るいのが好きか、というただの好みだ。

一つの作品を客観的に評価する場合の完成度の高さと好みは分けて考えなければならない。

もちろん完成度が高くても自分にとってつまらないと思うことはよくあることなので、好きなものは好きだと言っていいし、言うべきだ。

さて、ではなぜアニメ版の『リアリズム殺人事件』のほうがいいのかに入っていこう。

伏線とどんでん返し

『リアリズム殺人事件』は『地獄変』をモチーフにしているので、女性が殺されそうになるんじゃないか、ということは誰しもが想像するだろう。

原作版はその通りに進み、魔美が救って問題解決という単調な流れになっている。

しかしアニメ版では、「まさか、もしや」とハラハラさせておいて、最後にひっくり返して終わる。

ミステリー小説で例えると、1ページ目から犯人がわかってしまって、最後まで読んだときにやっぱりそのままだったというものと、最後に予想外の犯人がわかるというものならどちらがいい作品だと思うだろうか。

それに伏線の張り方も原作より洗練されている。

まず監督がリアリズムにこだわって、『元禄血笑記』という映画で本物の刀を使って撮影した、という話だが、原作では死人が出たという噂、アニメ版では怪我人が出たという噂になっている。

流石に死人が出た場合、映画会社がもみ消すのは不可能で、噂レベルではすまないはずだ。
そこがアニメ版では怪我人になっていて、噂の信憑性が高まっているように思う。

次に良秀役の役者に食事を取らせないようにするところでは、原作では5日、アニメ版では3日になっている。

5日断食をすればさすがに絵を描くどころではないだろうし、演技をするどころではなくなってしまうので、3日にしたのではないだろうか。

他にもいくつかある。

アニメ版では女性が自分がなぜ選ばれたのか自身がないような心理描写が追加されていたり、絵師の娘役をしていると魔美に伝えた時、魔美が「絵師の娘?あたしみたい!」というセリフが追加されている。

槍を持った役者に追い出されたとき、高畑さんが「あの槍も本物だったのかなぁ…」というのもアニメオリジナルだ。

次回はアニメ版『リアリズム殺人事件!?』を勝手に少し深読みしてみたいと思う。

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【エスパー魔美】衝撃の問題作『リアリズム殺人事件』についてVol.6はこちら

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