エスパー魔美は藤子・F・不二雄作品の中でもドラえもんに匹敵する最高傑作の一つだと思う。
いろいろ面白かったり感動させられる話があるのだが、かなり異色な回がある。
それは『リアリズム殺人事件』だ。
私自身は子供の頃、コミックで読んで衝撃を受けた。
アニメは大人になってから見た。
ざっくりあらすじを書いてみる。
そこには自殺をしようとしていた女性が。
魔美が自殺を止めようと説得しているところに、一人の老人が歩み寄り
「死ぬのはかまわん。だがその前にせっかく生まれてきたんだから、この世に一つ足跡を残していかんかね?きみでなければできん仕事なのだよ。」
と言う。
女性は自殺を思いとどまり、その老人についていく。
後に魔美は、その老人が映画監督で、現在新作を撮影中だと知る。
女性のことが気になり、高畑さんと一緒に撮影現場に忍び込むと、なんとその女性は女優になっていた。
役は絵師の娘役であることや、セットの建物が堀川御殿であることを聞いた後、秘密主義の監督に見つかり追い出されてしまう。
女性から聞いた情報から、高畑さんが監督が撮影している新作は芥川龍之介の『地獄変』だと推理する。
『地獄変』という作品は、最後に絵師の娘は焼き殺されてしまうという話だ。
監督は過去にリアリズムを追究するあまり、撮影で真剣を使い、本当に斬られて死人が出たことがあると噂される人物だと知る。
その監督が絵師の娘に自殺をしようとした女性を抜擢したのだ。
魔美は女性が焼かれている夢を見て、急いで現場に駆けつけるのだが…。
さて結末はどうなっただろうか。
なんとこの結末は原作とアニメでは全く違っている。
原作をアニメ化するときにストーリーを変えてしまう理由は、クレームを避けるために過激な表現をマイルドにするため、ということが多い。
もしかしたらこの『リアリズム殺人事件』もそんな理由かもしれない。
しかし、結果的に原作よりもアニメのほうが、上質な作品に仕上がっていると私は感じた。
その理由を原作とアニメ版を比較しながら説明していこう。
タイトル
原作
『リアリズム殺人事件』
アニメ
『リアリズム殺人事件!?』
ポイント
アニメ版では『!?』をつけているところがポイントだ。
冒頭
原作
魔美がテレポートをしながらどこかへ急いで向かっている
「近いわ!
ここは自殺の名所、高平山団地…。
今夜もだれかが!?
早く見つけないと…、ああっ、いまにも飛び降りそう!!」
そして団地から飛び降り、地面に叩きつけられそうになる女性をテレキネシスで間一髪救う。
アニメ
魔美が高畑さんの部屋に新聞を持ってテレポートで入ってくる。
新聞の芸能欄の「鬼才カムバック 竜王寺監督久々の新作」というところを見せる。
そして「実は去年の夏のことなんだけど…。」と回想。
魔美が駆けつけると女性が電車に飛び込もうとしているが、怖くてすくんでいる。
魔美は「だめよ!自殺なんか!」と声をかける。
テレキネシスで止めようとしたそのとき、女性の後ろから誰かが引き止める。
ポイント
原作ではテレキネシスを使って自殺を防いでいるが、アニメでは声をかけただけだ。
魔美の説得と監督の説得
原作とアニメで大筋は同じ。
まずは魔美が「自殺なんかダメ!」と説得する。
しかし女性は「関係ないでしょ!あんたなんかにはわからない事情があるんだから!!」とまくしたてる。
魔美は圧倒され「わかるかわからないか、聞かせてよ。」と言うのが精一杯で、女性は「何もかも終わりにしたいのよ。それだけ…。」とけんもほろろ。
そこで老人(竜王寺監督)が説得する。
老人「死ぬのはかまわん。だが、その前に…、せっかく生まれてきたんだから、この世に一つ、足跡を残していかんかね?」
女性「足跡を?」
老人「しごとをひとつたのみたいのだ。それによってきみは…死後も永遠に生きることになる。」
女性「死後も生きる?できるわけないでしょ。」
老人「できる!いや、きみでなければできんしごとなのだよ。
死ぬ気だったんだろ?それじゃもう、なにも恐れるものはないはずだ。
とにかく話を聞いてくれないか。」
この老人の説得によって女性は自殺を思いとどまる。
原作のみにある部分
女性が「どんなことをしても死ぬんだから!!」と言った後、原作の竜王寺監督はこう言う。
「止めはせん。現にこれまで、この屋上から四人の自殺者が飛び降りるのを黙って見過ごした。」
女性は「じゃあなぜあたしだけ止めるのよ?」と訊く。
監督は「やっと求めていた人が見つかったからだよ。」と答える。
原作では監督は自殺者を見過ごすような人なのだ。
そのため女性が自殺を思いとどまった後、魔美は「しかし…。なんかこう…、ひっかかるのよね」と言っている。
アニメ版では女性が自殺を思いとどまった後、魔美は満面の笑みである。
長くなってきたので今回はここまで。
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