今回読んだのは落合陽一氏『これからの世界をつくる仲間たちへ』です。
今更感が半端ないのですが、実は落合陽一氏の本を読んだのは初めてだったりします。そしていろんな意味で想像以上に良かったので共有したいと思います。
まずどんな部分がよかったのかというと、落合陽一氏はその賢さゆえ、たまに違う次元で会話をしているので、言ってることが我々凡人には理解できないことがあります笑
しかしこの本は、そんな凡人の私にも読みやすいように書かれているので、「落合陽一の言ってることは難しくてわからん」という方にも読みやすいと思います。
落合陽一『これからの世界をつくる仲間たちへ』を読んで
全体的なメッセージとしては、AIやIoTなど、テクノロジーが発達していく中で、【シンギュラリティ】【マルチラリティ】【2045年問題】など、これからの数年数十年は激動の時代に突入します。
しかしそれに気づいている人は少ないですし、わかっていてもどうすればいいかがわからない、ただ時間だけが経過してしまう。そんな『これからの世界をつくる仲間たちへ』の強烈なメッセージであり、指南書です。
【クリエイティブ・クラス】と【暗黙知】
これからの世界で生き残るには【クリエイティブ・クラス】にならないといけないと著者は言います。
【クリエイティブ・クラス】とは、リチャード・フロリダが提唱している階級で、「創造的専門性を持った知的労働者」です。
今までの社会では、莫大な資産や石油など、物理的な資産を『資産』と呼んでいましたが、これからの時代、創造的専門性や誰も盗むことのできない【暗黙知】が『資産』になっていきます。
こういった話でパッと思いついたのは中野瑞樹先生。
中野瑞樹先生は、元東京大学の教員で、2011年5月からは、本格的にフルーツ啓蒙を進めるため、『フルーツのみで生活』という、常人では考えられない人体実験を行っています。しかも水分もフルーツから摂っており、水やお茶も飲みません(塩分が不足するのでフルーツのぬか漬けなどで塩分は補う)。この実験も現時点ですでに7年ほど経過していますね(まだまだ継続中)。
おそらく過去に誰も行っていないであろうこの人体実験。これは世界でも中野瑞樹先生のみぞ知る【暗黙知】ではないでしょうか。
魔法について考える
たとえば普段、我々が使っている交通系ICカード(SUICAやPASMO)。改札やレジでピピっとすれば自動的に精算されることは誰でも知っていますが、その仕組みを説明できる人はどれだけいるでしょうか?
実はすごい!交通系ICカードの仕組みとは? | サービス | プロエンジニア
昔の人にいきなり見せたら魔法のようですが、あれも現代の人間が時間をかけて作り出した産物です。
これは私が以前、撮影した落合陽一氏の『レヴィトロープ』という作品。
銀色の球が宙を浮いて回っています。
完全に魔法です。
著者は本の中で、こういった映像を見た海外の人から「どんな仕組みなのか教えてくれ」とメッセージをもらうことがあるが、日本人からのメッセージは「宣伝で使いたい」など、表面的なものばかりであると述べています。
『そうやって、世界をできあがったシステム」だと考えていたのでは、そこで起こる問題を解決することはできません』
英語への距離感
これからの時代、インターネットや教科書で調べればわかることをいくらたくさん知っていても、それは価値になりにくいです。
外国語についても、数十年前は「英語が喋れる」ということがかなりのアドバンテージになっていましたが、今は翻訳の向上もあり(精度や手軽さ)、英語が喋れなくても困りにくくなりました。
『英語はプログラミング言語の一種だと思って、練習して使いこなせるくらいが丁度いい距離感のように僕は感じています』
それよりも日本語だから英語だからではなく、「何を言っているのか」が重要になってくるのです。
たまに若い人で「英語を勉強したいので留学する」という方がいます。
もちろん、英語が好きで追求したいのであれば、それはそれで大いに結構なのですが、言葉というのはあくまで手段なので、大半の人は「英語を使って何かしたい」と思っていると思います。その先を追求するための手段のはずが、いつのまにかゴールになってしまっている人も少なくありません。
今は英語があまりできなくても外国人とコミュニケーションをとることは難しくありませんし、「英語を勉強したい」と思っている人は、もう一度「なぜ?」を考えてみてもいいかもしれません。
深い話をしよう
別に意識高く難しいことを言えと言っているわけではありません。
上記の魔法や英語の話と通ずるのですが、現存するシステムやプラットフォームについて、抽象的なものを「なぜ?」と言語化することで思考体力が養われます。
本書では「ピカソが高く評価される理由」について書かれており、「史上最高額で落札された」という、ネット上に溢れている回答を脳内でコピペするのではなく、
・なぜピカソが評価されているのか?
・ピカソ以外に評価されている画家は?
・その画家とピカソの共通点と相違点は?
・ピカソだけが抜けて評価されている理由は?
・画家以外で評価されている表現者は?
と、基礎知識やその他の知識を連結させて、頭をフル回転させます。
そこで導き出された回答は、インターネット上を探しても出てこない、あなただけの暗黙知になるのです。
少し哲学的な感じもしますが、著者は「自己啓発書を何冊も読むくらいなら、1冊でもいいからニーチェのような哲学書を読んでみた方がいいのではないでしょうか?」と説いています。
『これからの世界をつくる仲間たちへ』は現代人への強烈なラブレター
要約、書評として、端的にまとめようと思ったのに、どんどん長くなってしまいました。
これでもまだまだ紹介できていない話があるので、興味のある方はぜひ。
個人的には「みんな、こっちの世界へおいでよ」と言っているような気がして、我々凡人への強烈なラブレターのように解釈しています。
そういえば新刊を立ち読みしたのですが、すでに重要部分にマーカーが引かれているのが印象的でした。