北村良子『論理的思考力を鍛える33の思考実験』読了。
彩図社 (2017-04-27)
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思考実験っていうと、なんだか難しそうなイメージですが、
「特定の条件の下で考えを深め、頭の中で推論を重ねながら自分なりの結論を導き出していく」
要するに、自分の考えを重ねていけばいいのです。
なんだかとっても簡単そうに聞こえてきます。
暴走トロッコと作業員
線路の切り替えスイッチのそばにいるあなたは、とんでもない光景を目の当たりにしていました。
あなたの右方向から石をたくさん積んだトロッコが猛スピードで暴走しています。(中略)とうてい今から止めることはできません。ただ、線路の切り替えを行えば進行方向を変えることができます。
線路の先には5人の作業員がいます。5人ともトロッコにはまったく気づいておらず、おそらく避けることはできないでしょう。このままではトロッコが突っ込み、5人は死んでしまいます。
あなたは、切り替えスイッチの存在に気がつき、これを切り替えて5人を助けようと思い立ちます。あなたは切り替えスイッチに近づき、勢いよくスイッチに手を伸ばします。
しかし何ということでしょう。あなたは一瞬、切り替える先の線路のほうに目をやり、様子を確認しました。すると、視線の先には1人の作業員がいるではありませんか。スイッチを切り替えれば、この1人の作業員が死んでしまいます。
あなたはこの6人と面識はなく、6人とも何の罪もない人です。(中略)あなたもたまたまこの現場に居合わせてしまっただけで、そこにスイッチがなければただの傍観者の1人です。
実際には「5人もいれば誰か気づくだろう」とか、「大声を出して危機を知らせる」とか、いろいろな方法を考えてしまうところですが、ここではスイッチを切り替えること以外あなたにできることはなく、作業員はトロッコの暴走に気づいていない状態とします。
あなたはスイッチを切り替えますか?
それともそのままにしますか?
これはとても有名な思考実験で、この本でも一番最初に出てきますし、この本のレビューや書評では、ほとんどがこの思考実験を紹介しています。NHKの番組でも紹介されたことがあるそう。
この思考実験の多数派は【スイッチを切り替え、1人を犠牲にして、5人を助ける】というものだそう。しかも、大体85%以上の人が「スイッチを切り替える」と回答したというから個人的には驚きでした。私とは違いますね。私はスイッチを切り替えないので。
考え方としては、人の命の重さを【数】でカウントしたということになります。
(1人の命より5人の命の方が重い)
対するスイッチを切り替えない派の我々の主張はこう。
「元々死ぬ運命になかった人間を、自らの手で殺すことはできない」
要するに成り行きに任せるというもの。自分がスイッチを切り替えることで【傍観者】から【当事者】に変わってしまいます。
ちなみに思考実験には明確な正解があるわけではないので、「こういう意見もあるんだ〜」と、新しい選択肢を受け入れることに意味があるのです。
モンティ・ホール問題
「プレーヤーの前に閉まった3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれを意味するヤギがいる。プレーヤーは新車のドアを当てると新車がもらえる。プレーヤーが1つのドアを選択した後、司会のモンティが残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。
ここでプレーヤーは、最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更してもよいと言われる。プレーヤーはドアを変更すべきだろうか?」
1990年9月9日発行、ニュース雑誌 Parade にて、マリリン・ボス・サヴァントが連載するコラム「マリリンにおまかせ」において上記の読者投稿による質問に「正解は『ドアを変更する』である。なぜなら、ドアを変更した場合には景品を当てる確率が2倍になるからだ」と回答した。すると直後から、読者からの「彼女の解答は間違っている」との約1万通の投書が殺到し、本問題は大議論に発展した」
wikipediaより
これもとても有名な問題。テレビでも紹介されていたこともあった気がします。
ちなみに大論争が巻き起こったこちらの議論ですが、結果的にはマリリン・ボス・サヴァントが回答した「ドア変更で確率が2倍」が正しいことが証明されました。
ざっくり解説すると、最初はABCの3つのドアから選ぶので、確率は1/3です。
そしてモンティが意図的にヤギのドアを開けるので、確実にハズレのドアが選択肢から外れます。
この時点で、最初の1/3が変更した場合のドアに足されるのです。
こちらが全パターンでの検証図。
<ドア変更なし>
<ドア変更あり>
ドア変更で確率が2倍になっています!!
ルーレットの確率
ルーレットの確率について、こんな質問をしたとします。
<AとB、どちらが珍しいですか?>
(この場合、「ディーラーが投げる強さなどを調整できる」などはないものとする)
A | B | |
1回目 | ⚫️ | ⚫️ |
2回目 | ⚫️ | 🔴 |
3回目 | ⚫️ | ⚫️ |
4回目 | ⚫️ | 🔴 |
5回目 | ⚫️ | 🔴 |
6回目 | ⚫️ | ⚫️ |
7回目 | ⚫️ | ⚫️ |
8回目 | ⚫️ | 🔴 |
9回目 | ⚫️ | ⚫️ |
10回目 | ⚫️ | 🔴 |
ほとんどの方が【A】と答えるようです。
たしかに黒が連続10回出たら、すごく珍しいと思ってしまいがちですが、ルーレットの確率は、2の10乗で1024通りあり、どのような結果になろうと、【1/1024】の内の1回に過ぎないのです。
ピンチに陥った時、呆然とするか、思考するか
イギリスの心理学者、ジョン・リーチによると、人は大惨事に見舞われた時、3つのグループに分けられるそう。
①呆然とする
②冷静に行動する
③取り乱す
そして7割強が①だと言います。
1977年、スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島にあるロス・ロデオス空港での事故について。
(テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故)
乗客乗員合わせて583人が死亡、生存者は61人(乗客54人と乗員7人)。
実はこの事故、衝突した時点ではそこまで被害者が出ていなかったにも関わらず、その後の火事で多くの人が亡くなっています。
そして、この事故の複数の生存者は、普段から「もしこうなったらどうしようか」という深い思考を繰り返しており、それがいざというときの素早い行動につながったという説があるのだそうです。
現実に起こり得るかわからない想定ばかりしていても仕方ありませんが、最低限の想定をしておくことで、ピンチに陥った時、呆然とすることを回避できるかもしれません。
そういう意味では「なるほどねー」くらいに読んでおくといいかもな一冊。
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記事を書いている人
ノリオメモ(@noriomemo )
株式会社NOOE.TOKYO 代表取締役兼COO。美容健康系メディアなどの運営を経て、2018年5月、起業家と投資家をマッチングさせる『CHAINS』をローンチ。
2018年7月からはオンラインサロン『ノリオンラインサロン』を主催。遊ぶことに命かけてる。アソ部主催。
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