田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』読了。
KADOKAWA (2017-01-19)
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前々から気になっていた本ではあったのですが、ようやく読めました。
ささいな自己嫌悪からうつのトンネルへ
最初に著者がうつのトンネルへ入ったことのキッカケが描かれるのですが、、、、
この部分に注目!!
そう。著者は仕事が嫌いだったわけではないのです。うつというと、仕事が忙しかったり、社内でパワハラにあったりというイメージですが、必ずしもそういうわけではないのです。
ただ、、、、
・「もっと頑張らねば」と、ハードルを高くする
こういうことがキッカケで、うつのトンネルへ入っていったそうです。。。。
その後は処方された精神安定剤を「このまま薬の量が増えたらヤバいんじゃないか?」と、勝手にやめてみたり、医者を転々とする、いわゆる【ドクターショッピング】をして、泥沼に入っていったそう。。。。
そして著者は以下の方法で、ようやくうつのトンネルから抜け出したそう。
・「〜ねばならない」という考える棄てる
・ネガティブな言葉はやめて自分を褒める
・アファーメーション(肯定的自己暗示)
突然リターンの正体
突然リターンとは、うつのトンネルを抜けたと思いきや、突然うつのような症状が再発する現象です。
鬱などの症状は、ある日を境に急に良くなるというものではなく、一進一退を繰り返しながら少しずつ良くなるものなので、こういった症状はよくあるようです。
また突然リターンの原因として、著者が出した仮説は「激しい気温差」によるものだと推測しています。これは、著者が毎日その日の精神状態や気温差を付けていたところ判明し、翌日の天気予報から予測した精神状態が翌日当たったり、翌日の電車の人身事故が多いなど、当てはまることが多かったそう。
また、Twitterなどで情報収集していると、
・ホルモンバランス
・胃の調子
・血行
・体温
・台風
など、さまざまな外部要因によっても引き起こされるとのことでした。
その他のうつヌケ
ここからはさまざまなうつ経験者や精神科医へのインタビューを通じて、うつに触れていきます。
照美八角
27歳で会社のビッグプロジェクトを任されるも、上層部の期待と重圧、解決しない技術問題などが重なり、身体が動かなくなってしまったパターン。
そして会社を退社し、日本全国をバイクで旅し、死に場所を探す旅に。そうして毎日、いろんな温泉につかっていたことで、だんだん全てがどうでもよくなり、気が楽に。
自分が壊れる前に逃げる道があると。
折晴子
30すぎで雑誌の編集長になり、企画が当たって大ヒット。ビギナーズラックでヒットしたのが自信になり、パワハラ的暴君へ。そしていよいよ部数も落ち込み、耐えられない不安から心療内科の道へ。
うつヌケのキッカケは意外なもので、趣味で始めた山登りの、急に出てくる太陽。そして山登りの最中に感じたことを日常と照らし合わせることで、少しずつ気分が楽になっていったそう。
大槻ケンヂ
22歳で筋肉少女帯を結成し、24歳で日本武道館のステージに。順風満帆なようにも思えますが、元々ネガティブ思考だったのもあり、「ダメになったらどうしよう」という不安からパニック障害や不安神経症に。
そして一番厄介だったのがヒポコンだったと。ヒポコンとは『ヒポコンドリー性基調』といって、死への恐怖が極端に強くなる人のこと。
ただ【孤独感】が一番恐かったので、仕事で人と接していると世界とつながっていることを実感できて安心できたので、芸能活動は問題なくできたと。
そのうち、うつとは、自分の持つエネルギーが心の闇に集中することだと気づき、プラモデルを買い込んで延々と作り続けることで、楽しくて気が紛れたとも言います。
極真空手をはじめたことで、スポーツでアドレナリンが出るためか、少し前向きになったり、友人がドライブに連れ出してくれたり、かなり試行錯誤しています。
そして『森田療法』というものに出会います。
森田療法とは、仏教の考え方を取り入れた治療法で、
「不安」も「葛藤」もなくすことはできない。人間は生きていく限り、老いも病気も死も避けられない。
だから不安はあるがままに捨てて、今、自分がすべきことをすればいい。
その上で、成功しても、失敗しても、その人生は間違いではない。
ここで自分を俯瞰する視点を持てるようになり、一気に気が楽になったとのこと。
<大槻ケンヂからのアドバイス>
①心の故障を治すくらいの気持ちで医者へ
②性格も含めて自分を変えるよう行動してみる
③辛いのは自分だけじゃない、克服した人もいることを認識して情報を集める(ネットより本)
④辛いのは今だけ。時が経てばそのうち「いい人生だ」と思える日は来る
深海昇
このケースはうつ病治療で1年休養して復帰したと思ったら、実はうつ病ではなく「双極性障害Ⅱ型」であったパターン。
双極性障害Ⅱ型とは、鬱と躁を繰り返す症状で、うつと同様、劇的に治るものではありません。
ここでのアドバイスは「医者から処方される薬や治療法を信じてほしい」とのこと。その薬が合わずに治らなかったわずか数%の人が民間療法などに走るとも。
精神科医・ゆうきゆう
ゆうきゆう氏といえば『マンガで分かる心療内科』シリーズの作者。
もう16巻も出てるのか…
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ゆうきゆう氏曰く、うつ病になりがちな人の共通項は【認知が歪んでいる人】が多いそう。
たとえば、買ったばかりのパソコンが2台連続で、早々に故障してしまった場合、、、、「3台目も4台目もすぐ壊れてしまうんじゃないか」と思ったり、クラスの数人に嫌われただけなのに、「クラス全員から嫌われている」と思い込んでしまったり、、、、
そういう場合、物事を高い位置から客観視するクセをつけるといいそう。そのために【客観的事実:主観的感想】を【1:1】の比率で日記を書くのがコツ。それを時間を置いて読み返すことで、悩みがさほど大きなものではないと実感できるのだそう。
・リスカする若い女性はいるけれど、リスカするお婆ちゃんはいない(加齢とともにエネルギーが低下)
・ペットを飼ったり、アイドルにハマったり、新しい趣味を作ることで、相対的に悩みの面積を小さくする
まついなつき
エッセイストのまついなつき氏は、この本で初めて知りましたが、まつい氏の場合は、離婚後、家事も仕事も子育ても全部を頑張りすぎてうつに。
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責任を抱え込む性格だったのを、少しずつ責任を小さくしていくことで楽になっていったと。
ゴミだらけの家も大量に物を処分してダウンサイジング。たしかにうつの人の家は散らかり気味というイメージ。
熊谷達也
小説家の熊谷達也氏は、多忙な教師時代、結婚を機に田舎の中学校へ引っ越した翌年にうつに。転勤で気が抜けて30年分の疲れが一気に出たようです。そういうパターンもあるんですね。
ちなみに奥さんが「教師をやめる」と選択肢を提示してくれたことでトンネルから抜け出したそうです。
まとめ
うつにはいろんな症状がありますし、上にもあるように自覚症状のない「ステルスうつ」や、一度寛解したと思ったのに再びやってくる「突然リターン」もあります。
「これが正解!!」という決まった治療法があるわけではありませんが、うつの症状がある方は、このあたりを参考にしてみるといいかもしれません。
・「〜ねばならない」という考える棄てる
・ネガティブな言葉はやめて自分を褒める
・アファーメーション(肯定的自己暗示)
・「自分はうつじゃない」と自覚症状のがない場合もある
・「ホルモンバランス」「胃の調子」「血行」「体温」「台風」などの、外的要因で起こる場合もある
・一度寛解したと思っても、何度もトンネルに突入することもある
・劇的に良くなるわけではないので、少しずつ良くなることを願う
・気になることがある場合、心の故障を治すくらいの気持ちで医者へ
・時間が解決してくれることもある
・医者から処方される薬や治療法を信じてほしい
・新しい趣味を作ることで、相対的に悩みの面積を小さくする
・責任を抱え込まない
・自分が壊れる前に逃げる道もある
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記事を書いている人
ノリオメモ(@noriomemo )
株式会社NOOE.TOKYO 代表取締役兼COO。美容健康系メディアなどの運営を経て、2018年5月、起業家と投資家をマッチングさせる『CHAINS』をローンチ。
2018年7月からはオンラインサロン『ノリオンラインサロン』を主催。遊ぶことに命かけてる。アソ部主催。
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