このブログの記事を1,2か月振り返ってもらえばわかると思いますが、最近はCHAINSや『#はあちゅうサロン』など「コミュニティ」について記事を書くことが多いです。
よくよく考えれば去年はVALUについて、10年前はTwitter、そして更にその前はmixiと、インターネットの中では常に「コミュニティ」という言葉がついてまわっていたような気がします。
しかもmixiでは名前のとおり「コミュニティ」と呼ばれる、共通の趣味で盛り上がれる機能まで搭載されていましたし。
今回紹介するのは、そんな「コミュニティ」について書かれている本、佐渡島 庸平『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.』。
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#はあちゅうサロン内で、はあちゅう先生からいただきました。
しかも幻冬社箕輪氏がはあちゅう先生に送って、それをいただいているので縁起良さそう。
(付箋付き)
佐渡島さんの「WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜」
幻冬舎の誰かが送ってくれた。
読むヾ(*´∀`*)ノ https://t.co/myyunOs45Y pic.twitter.com/lCJEQQ2vXh— はあちゅう (@ha_chu) 2018年5月3日
なんだか取り留めもない記事になってしまいましたが、どうぞ。
ノリオのコミュニティ体験
コミュニティについて意識して過ごしたことはあまりないですが、おそらくオフライン上では「コミュニティ」という言葉にはほとんど縁なく生きてきた気がします。
高校も大学もあまり行ってなかったし、地元の人とは疎遠。極端に人との対話を避け、「意識的にコミュニティを避けて生きてきた」とさえ言えます。
今は会社員ではないので、会社というコミュニティも存在しませんし、しいていえば2017年はVALU界隈の人に結構会ったので、そのあたりと、2018年4月から参加している「#はあちゅうサロン」くらいでしょうか。
(本当にコミュニティを避けて生きてきた)
第1章 現代の孤独とコミュニティ
「インターネットによるなめらかな社会」の中では、インターネットについてや、それに付随するシェアリングエコノミーについて書かれています。「これ、コミュニティの話と関係あるのか?」と思いつつも、とても良いことが書いてあるので、この部分は結構重要。
「デジタルは冷たくて、アナログは優しい、それが一般的なイメージだろう。しかし、インターネットをビジネスをしている人の感覚は逆だ」
「AIに仕事を奪われる」という意見がたびたび世間に流れていますが、インターネット界隈や、AIを研究している人たちにとっては「奪われる」のではなく「やってくれる」という気持ちの方が強いです。
インターネットが24時間365日、常時接続してくれているおかげで、私は毎日飲んでいる炭酸水を、イチイチお店に買いに行かなくて済みます。
amazonでミスって炭酸水が4箱きた。
消費するもんだから別にいいけど邪魔だな。
ちなみにこの炭酸水美味しいです。もう1年以上は毎月頼んでるので、200本以上は飲んでると思う。
味も全部試したけど、このシリカに落ち着きました。 pic.twitter.com/NHzxpGrzil
— ノリオメモ (@noriomemo) 2018年5月31日
もしインターネットで水が注文できず、イチイチお店に買いに行かなくてはいけなかったら、おそらく私は毎日水道水を飲んでいるでしょう。
そしてこの流れは今後さらに進みます。
インターネットで検索がするのが面倒 → Amazon Echo(Alexa)に話しかけて注文
レジに並ぶのが面倒 → Amazon GOで商品を持って行くだけで決済完了
UberやAirbnbは、稼働していない車や部屋をシェアできるようになったし、これからもさらに進化していくでしょう。
(シェアリングエコノミー万歳)
そしてこんなことも書かれています。
「それで十分になったと思う人は、自分を現状に合わせて満足する人だ」
Airbnbも自己課題から生まれたビジネスだし、自分の課題から生まれるビジネスは本当に素晴らしいものが多いなと思います。他者の課題と違い、心の底から改善したいと思えるだろうからでしょうか。
わがままであれ。
また「アイデンティティの元は何か?」の中では、アップルの今後の企業価値について書かれていますが、それがなかなか斬新な意見でした。
(詳しくは読んでください)
問題解決型の教育システム
最新のデータでは幼稚園育ちよりも保育園育ちの方が、現代の仕事では活躍するというデータがあるらしく、その日の予定が決まっているかどうかの違い、要するに「その日何をするか」を自分で選択するかどうかの違いが表れているとのこと。
また問題解決について、ゆうこす、角田陽一郎、はあちゅうの本のタイトルを引用し、彼らを分析しています。
「彼らの価値は、問題解決ではない、問題発見だ」
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そしてインターネットが普及することで起こる「多くの人が幸せを感じられていない」ことについて。
パンドラの匣は開けられてしまった。インターネットによる変化は不可逆だ。“奴隷の幸福”を自分の幸せにしてはいけない
なかなか刺さる言葉です。
そしてその原因について著者は「情報の爆発」だと述べています。
情報の爆発
2002年のインターネット内の情報を10とすると、2020年のインターネット内の情報は6万!6000倍!!
どの情報が信頼できるかなど取捨選択するだけで疲れてしまうので、信頼できる人やコミュニティが影響力を持つようになっている。
(著書の中で紹介されているのは、レストランは食べログやRetty、化粧品は@cosme、家電は価格.comなど)
著者は情報の爆発への対策として、情報の一つ一つに意思決定するのではなく、どのコミュニティに入るのかを意思決定することで、情報爆発に対応できるのではないかと述べています。
情報の可視化
また「情報の可視化」について、インターネット以前の共通の趣味嗜好の人に出会うことの確率と、インターネット後のそれでは、明らかにその効率が違います。
自分に置き換えるならば、私は格闘技が好きですが、サッカーや野球に比べて競技人口も少ないし、普通に生活してて格闘技をやっている人に出会うことはほとんどありません。しかしインターネットでその情報を探せばいくらでもいます。
実際、インターネット上で格闘技の練習をしているコミュニティを発見し、一緒に練習させてもらったことも。
(インターネット万歳)
第2章 持続可能な経済圏としてのコミュニティ
この章ではコミュニティをどうやって持続可能にするのか、第1章はコミュニティを探している人の「コミュニティとの向き合い方」がテーマだったのに対して、コミュニティ運営目線になっています。
・サザンオールスターズが5年休止していても復活後のチケットが売れたのはファンクラブが存在したままだったから
・だんご3兄弟の佐藤雅彦氏はだんご3兄弟がヒットしたせいで新しく好きになる人が減った
・クリエーターが作品に集中するために必要なのはエージェントとファンコミュニティ
・パレートの法則において、AKB48は握手券や投票権をつけてそれが成立しているが、作家のそれはまだ出来上がっていない
また「モノではなく体験を売る」ということについて。
最近でこそかなり浸透した価値観ではありますが、いまだにオンラインサロンについて「お金を払って働くの?」とか、VALUについて「儲からない」という意見をする人がいますが、少し的外れな意見でしょう。もちろん儲かる儲からないも大事なことではありますが、少なくとも今オンラインサロンやVALUにいる人は金勘定とは違う目的でコミュニティの中にいるような気がします。
著書の中では初期のほぼ日を引用しており、寄稿された原稿料が無料なことについて、ビジネスとして考えるとおかしいと思ったが、コミュニティで、ファンが集う場所だと捉え直したら全然違う顔を見せたと書いています。
また今年発売された小野雅裕氏の著書を、宇宙兄弟のサイト連載からスタートし、ファンとFacebookの非公開グループ内で一緒に作り上げ、発売までの自発的なカウントダウンや、SNSでの拡散をしたことで、売り上げに繋がったと。
(本のタイトルもFacebookグループ内の話し合いで決まったらしい)
そしてそれをみんなが仕事ではなく、好きだからやったという。その仕組みを用意することが重要だと。
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ファンクラブからファンコミュニティへ
そしてクリエーターとファンの繋がりは1対nになるが、ファン同士がコミュニケーションをとるn対nの関係になるコミュニティについて。
今だとキングコング西野氏の「西野亮廣エンタメ研究所」、堀江貴文氏の「HIU」、箕輪厚介氏の「箕輪編集所」、そして私も所属している、はあちゅう氏の「#はあちゅうサロン」など。
1対nで情報を享受するだけだとファンクラブですが、nが自発的に動ける空間作りこそがn対nの醍醐味。
またグッズ販売について著者は、宇宙兄弟のグッズでは宇宙兄弟の世界を体験するきっかけになるような商品を心がけているとのこと。
第3章 安全・安心とは何か?
この章では「安全・安心」について書かれています。
著書では野球で例えられていて、同じ野球部でも「甲子園に出たくて必死に野球をやっている人」と「趣味で楽しく野球をやっている人」を比較した時、その野球の練習に対する熱量がどちらに傾いても、どちらかからしたら「安全・安心」な場所ではなくなってしまうと書かれています。
今までは「熱狂をどのように伝播させるか」が優先順位1位だったのが、少しずつ「熱狂は善だけではないかもしれない」と、少しずつ考え方が変わり始めたとの書かれています。
ただ熱狂がないのもそれはそれで崩壊してしまうし、あくまで順番が重要だと。
②安全・安心の確保 → 熱狂 → 拡大 → 安全・安心の確保
著書では②の繰り返しが重要とのこと。
またこんな言葉も。
「コミュニティは、拡大するたびに、新旧両方のメンバーの安全・安心が必ず脅かされる。」
これはかなり名言ですね笑
また熱狂には二種類あり、それは「テンション」と「モチベーション」。テンションの高い状態の熱狂はいずれ疲弊するので長くは続かない。しかしモチベーションの高い状態の熱狂は自己肯定感が強く、上がったり下がったりしない。
信仰ではなく信頼
安全・安心を確保したら、次に目指すは信仰ではなく信頼。信仰は無条件に信じること。信頼は過去の実績を信用して、不確実性のある未来のことも信じて評価すること。
#はあちゅうサロンでは、指針の中に「5give1take」がありますが、コミュニティを拡大運営させていく上ではかなりキーポイントになってくるでしょう。
こんなことも書かれています。
「世の中の多くの議論は、安全と安心が一緒にされて、立場によって、安全・安心の境界がずれていることに気づいていないことによって起きている」
またコミュニティの運営においても、「安全・安心」について書かれており、このあたりはオンラインサロンなどの特殊なコミュニティ運営だけでなく、会社やサークルなどにもかなり当てはまると思います。
「それぞれの人が、どんな行動をするのか、予想できるようにすること。それがコミュニティを安全・安心な場にするためにすごく重要だ」
このあたりはまた別の機会に書きたいのですが、最近「なんでアルバイトとか会社員の人ってこの場面でアドリブきかないんだろう?」と思うことがよくあるのですが、「おそらくこの人の上にいる人に、そのアドリブが理解されない気がするから、わざとアドリブをきかせないようにしているのかもしれない」と思うようになりました。
(このあたりはまた別の機会に書きます)
「オンラインコミュニティを運営するときは、どうやってオンラインとオフラインのつながりをなめらかにするかを設計する必要がある」
ちなみに第3章のラストには「今日のコルク」という連載漫画の一部が載ってます。面白かったです。
ここで試し読みできます。
今日のコルク (1) 〜新人マンガ家のスケッチブック〜
第4章 コミュニティを編集する
第4章は佐渡島庸平氏と箕輪厚介氏の対談形式。
佐渡島氏がコルクラボを作ったのが2017年1月、箕輪氏が箕輪編集室を作ったのが2017年7月。
佐渡島氏がコルクラボを作った経緯は、インターネットに対応した編集者になるためには必然的にコミュニティプロデューサーにならざるを得ないと思いコルクラボを立ち上げたのに対し、箕輪氏は思いつきと勢いでスタート。単純に忙しくなったのでアシスタントを募集したところ、たくさんのDMがきたので、そのままサロンにしたのが経緯だそう。
納品主義からアップデート主義へ
納品主義:一度で完璧な情報を伝える
アップデート主義:不完全でもまずは伝達し、そこから修正を加えていく
コミュニティに関しては、アップデート主義が求められていると。雑な形でも、みんなが話題にしやすいような意思伝達方法にするべし。
AKB48などのアイドルや高校野球に訴求力があるのは、成長、つまりアップデートがあるからかもしれません。
佐渡島「これからの編集者の役割は、コミュニティを形成して、どれくらい未熟なコンテンツを投げ込むかを考えることだと思います。あまりに未熟な状態で投げ込むと死産してしまうし、完成度が高すぎるとコミュニティが活性化しない。そのバランスをとることに、編集者の力量がかかっています。」
まとめ
なんだか取り留めもなく長くなってしまいました…
(さらっと要約するつもりだったのに、コミュニティについて考えながら記事を書いてたら6,000字超えてしまった)
オンラインサロンに参加するようになって、自分でもコミュニティについて考える機会が多くなってきていたので、とても良書でした。
・オンラインサロンに入ろうと思っている人
・オンラインサロンを運営したい人
などには特にオススメです。
また、コミュニティやストーリーというのは、今後マーケティングなどにも活用できるので(コミュニティーマーケティングなど)、そういう意味ではマーケッターにも参考になるかと思います。
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